三世桐竹勘十郎作品展

Wilm2008-05-15

外出の途中、銀座を通ったので、「ギャラリー悠玄」にちょっと寄り道をして、「三世桐竹勘十郎作品展」を観ました。国立文楽劇場観劇記念スタンプ原画を中心とした勘十郎の作品展です。迂闊にも知らなかったのですが、1984年の国立文楽劇場開場以来、勘十郎が観劇記念スタンプの原画を描き続けているのだそうです。切り絵*1かと思うほど繊細な表現ですが、製図ペンを使って描いているということでした。文楽のお馴染みの演目の主人公たちを巧みに意匠化しています。

2階には水彩画も展示してありました。奥に飾ってあった「狐と桜」は、うれしそうに鼓を抱えて宙を舞っている子狐を描いています。「河連法眼館」の源九郎狐でしょう。勘十郎は、今年の二月公演で忠信実ハ源九郎狐を遣って縦横無尽の活躍を見せましたが、幕切れでは、きっとこんな子狐の気持ちになり切って演じていたのだろうな、と思わせる絵でした。ほかにもユーモラスな鼠や「国性爺合戦」の虎の絵などがあり、舞台での厳しい表情からは窺えない優しいお人柄が滲んでいました。

また、勘十郎が小学生のときに描いたという「小鍛冶」の後ジテ・稲荷明神の首の絵などは、幼少の頃から画才を発揮していたことを物語っていました。いずれの絵も、余技を超えた域に達しており、美術品として堪能させていただきました。

帰り際に、記帳をしたのですが、私の前に記帳したのは、有名な女優さんでした。上下に並んで記帳でき、光栄このうえないことでした。

*1:国立劇場での文楽公演のパンフレットには、鶴澤燕三の奥様の杉江みどりによる切り絵が掲載されているので、てっきり、大阪のスタンプ原画も杉江みどり作と思っていました。