「摂州合邦辻」

続く第2部は、「摂州合邦辻」から「万代池の段」「合邦庵室の段」。座席は、同じ最後列を少し中央寄りに水平移動した。

「万代池の段」も、松香大夫、三輪大夫、始大夫、貴大夫、希大夫、靖大夫、英大夫ら複数の大夫が勤める。三味線は、団七と団吾(ツレ)。合邦道心を文吾が飄々とした表情で遣う。

「合邦庵室の段」は、綱大夫・清二郎の切場も見事だったが、続く住大夫・錦糸の切場は、まるで世界が違うという感じだった。技法の限りを尽くした凄絶な語りは、他の大夫からは聴けないものだ。前段では、生臭坊主にしか見えなかった合邦の千千に乱れる心理、娘を手に掛けてから真実を知った後の苦悩を文吾が見事に描く。文雀の玉手御前も、父・合邦に刺されてからの長大な独白を息もつかせない緊迫感で遣う。聴き応え・観応えのある段だった。