長崎鼻

指宿の町を後にし、国道226号線を西進する。大山で左に折れ、長崎鼻に向かう。見渡す限りの甘藷畑の向こうに開聞岳が正三角形に聳え、これまた日本離れした景色だ。自動車道路の最南端にある長崎鼻パーキングガーデンの駐車場に車を停める。相変わらず体調のすぐれない長女を車に残し、妻・次女といっしょに長崎鼻に徒歩で向かう。

軒を連ねる土産物屋の前を通り過ぎると、いきなり眼前の景色が開けた。長崎鼻の岬だ。小さな薩摩長崎鼻灯台まで行くと、青く透明な海が180度に広がる。右手の海上には開聞岳がすっくと聳え立ち、水平線には、硫黄島竹島が見える。左手には、大隅半島が長く伸びている。高松の屋島の突端も長崎鼻と名づけられており、高松に住んでいた小学生の時分、鹿児島にも長崎鼻があるということを知って、以来一度行ってみたいものだと思っていたのである。思っていた以上に、すばらしいところだった。

帰りがけに、土産物屋でパッション・フルーツを長女の差し入れに買っていく。エンジンをかけ、エアコンを効かせた車内で、長女は眠りこけていた。この熟睡と、パッション・フルーツの酸味で、ようやく生気を取り戻した。