ソウルの地下鉄

最寄の江南駅から地下鉄2号線に乗る。改札はすべて自動化されているが、ターンバー方式なので、朝夕のラッシュ時には渋滞するに違いない。非接触ICカードの乗車券を使っている人もいた。ホームに下りると、水の流れる広告が上下線の間に並んでいる。軌間は、狭軌よりも広いようだ*1第三軌条はなく、天井の剛体架線による集電だ。地下鉄も道路交通と同様、右側通行なので、日本とは逆の方向から電車がやってくる。乗車してみると、車幅は東京の地下鉄よりも50cmは広いようだ。車内空間はかなり大きい印象を受ける。情報ディスプレイが天井の中央に取り付けてあり、ちょっと映画「マイノリティ・リポート」の一場面を想起させる(もちろん、虹彩スキャンはないが)。車内放送で、駅名の前に「ホーホケキョ。」とウグイスが鳴くのがご愛嬌だ。

西隣の教大駅で3号線に乗り換える。路線名が番号と色で表示され、駅には通し番号が振られているので、外国人にもわかりやすい。2003年2月に起きた大邱地下鉄の火災事故の教訓か、戸袋のところに頭からかぶる防煙マスクを入れた金属の箱が取り付けられている。薄い箱なので、座席定員分くらいしか入っていないようだ。車内では、おばさんが大声で口上を呼ばわりながら、手袋を売り歩いていた。どう見ても、正規の車内販売ではないが、商売繁盛しているようだった。

途中で地上に出て、漢江を渡る。昨日、タクシーでいくつか鉄道橋をくぐったが、地下鉄だったのだ。道路橋と並行している。広々とした漢江の眺めが美しい。橋を渡ると再び地下にもぐる。駅間が短い(500〜1,000m)せいか、走行中も携帯電話でふつうに通話できるらしい。地下鉄車内で携帯電話で通話してはいけない、というマナーはないようだ。

車内の地下鉄路線図を眺めているうち、面白いことに気づいた。「フト」という字は、漢字では「街」に当たり、読みは「Ga」であるということだ。ハングルは、漢字の部首に相当する部品の組み合わせによる表音文字だということは知っていたので、「フ」が「G」、「ト」が「A」に相当すると推測できた。ほかの字でチェックすると、どうもそうらしい。復号キーを得たので、これを手がかりにしていけば、地下鉄路線図からハングル全文字を解読できそうだ。

などと感心しているうちに、目的地の景福宮駅に到着した。コンコースが大きく、造りが頑丈だ。有事には、防空壕になるのだろう。

*1:帰国後調べたら標準軌1,435mmだった。