胃カメラ、ガレ、むじなと夜桜。

Wilm2004-03-30

曇り後雨。

先日の人間ドックで、胃に辺縁不整が見つかり、「内視鏡による上部消化管の精密検査が必要。」とのご託宣をいただいたので、赤坂の健診センターに行く。チェックインすると、検査の用意ができており、血圧検査、上腕筋肉注射の後、咽喉麻酔のゼリーを口に含まされる。上を向いてソファに寝転がっていると、最初のうちは口の奥に流動感があったが、そのうち、飲み込んでしまったかと思うくらい、何も感じなくなる。検査室に案内されると、上部消化管内視鏡装置が待ち構えている。もう一度口の中に麻酔薬を噴霧した後、先端から閃光を発している電子スコープを口に挿入する。食道に入る際、嘔吐反射があったが、あとはずるずると入っていく。20年近く前に内視鏡を飲んだときは、ニシキヘビが喉を通っていくような感じがしたが、その後の医療機器技術の発達のおかげで、ヤマカガシくらいになったようだ(管の直径は10mmくらいだろう)。管には90cmまで目盛が振ってあり、さすがにそこまでは入るまいと思っていたら、結局全部入ってしまった。十二指腸まで行ったようだ。腹部の膨満感が強くなり、苦しくなったら、ぶはっと空気を吐き出した。かなり空気を送り込んでいるらしい。10分くらいで検査終了。やはりあまり気持ちのいいものではない。検査医が撮像したばかりの静止画をPCのディスプレイに表示しながら、所見を説明してくれる。人間は、位相幾何学的には管とも言えるから、自分の内面を初めて直視したことになる。結論としては、軽い胃炎で、治療の要なし、ということだった。胃潰瘍くらいのことは言われるだろうと思って鬱になっていただけに、ほっとする。

健診センターを出たのは10時頃だったが、コンビニに寄って商品を手に取ると、焦点が合わない。胃の動きを抑えるという筋肉注射の副作用だろう。これでは午前中は仕事にならないな、と思い勝手に半休にする。何となく気が大きくなっているのは、注射に入っていた鎮静剤のせいか。

エミール・ガレ展

赤坂見附の交差点まで行くと、サントリー美術館の「エミール・ガレ展」の看板が目に入った。時間つぶしにちょうどよい、とばかり入館する。今年は没後100年とか。開館直後なので、空いている。花器が中心で、ランプは美術館収蔵品の「ひとよ茸ランプ」1点だけだったが、初期の作品やガレには珍しい陶器も展示されていて興味深かった。花器には、ギーガーにインスピレーションを与えたであろうようなグロテスクな作品もあった。ガレの作品では「ホップ文マグ」、彼以外の作品では、デプレの「眠れる子」が印象に残った。

赤坂プリンスの桜はまだ早いようだったので、弁慶堀に沿って坂を上っていく。長女が3歳の頃、二人でボートに乗ったっけ(彼女はまったく記憶にないそうだ)。上りつめたところで交差点名を見て、あっと驚いた。紀伊国坂である。小泉八雲の「怪談」に収められている「むじな」の舞台となったところだ。昔、娘たちを寝かしつけるとき、この話を思い切り引き伸ばしてだらだら話していると、のっぺらぼうが出てくる前に娘か私のどちらかが寝てしまったものだ。屋台の蕎麦屋が提灯を点して佇んでいたのは、このあたりであったか。喰違見附から四谷見附まで、お壕端の土手を歩く。ここの桜も、まだ満開ではないようだ。四谷から中央線に乗ってオフィスに向かう。ここで、いったんログアウトだ。
ISBN:4042120016

千鳥ケ淵の夜桜

夜桜見物だというのに、天気予報通り、夕方から雨になった。私以外に行いの悪い輩がいるに違いない。19時に九段下の駅でHさん、S君、O君、K君と落ち合う。前々職の会社の同僚だ。2000年以来、毎年、千鳥ケ淵の桜を見るのが恒例行事になっている。都内では、ここの桜がいちばん美しいと思う。まず靖國神社の境内に入るが、さすがに屋台の人影もまばらだ。続いて、千鳥ケ淵に行く。ここは満開だ。対岸の桜が雨に煙ってちょっと幻想的な景色になっている。写真は撮りにくいが、雨の夜桜も悪くない。何より人が少ないのが結構だ。九段下に戻り、居酒屋に入る。23時頃まで談笑。帰りは九段下から都営新宿線に乗った。新宿で小田急線に乗り換えるつもりだったのが、寝過ごした。幸い橋本行きだったので、そのまま京王稲田堤まで行くことにした(というのは結果論に過ぎない)。たまたま稲田堤で目が覚めたので事なきを得たが、そうでなければ橋本まで行った可能性もある。危ないことである。