コートールド・ギャラリー

夕方、仕事が終わりました。時間的に、コートールド・ギャラリーの終了時刻(17:30)に間に合いそうです。地下鉄で最寄駅のエンバンクメント駅まで行きます。テムズ川沿いに散歩をしながらコートールド・ギャラリーに向かいます。ウォータルー橋の上から、ビッグ・ベンウェストミンスター寺院が見えました。


コートールド・ギャラリーのコレクションは、1998年1月に日本橋高島屋で開催された「コートールド・コレクション展」で観たことがあります。そのときは、印象派をはじめとするフランス近代絵画が中心になっていましたが、その質の高さに圧倒された記憶があります。その本拠にぜひ行ってみたいと思っていたのですが、ようやく念願が叶いました。大理石の螺旋階段を登り、3階(英国風の数え方では2階)のギャラリーから観て回りました。重厚な内装の部屋に数多くの名作が展示されています。

コレクションの中核をなすのは、やはり印象派を中心とした19-20世紀のフランス絵画です。マスターピースマネ「フォリー=ヴェルジェールのバー」(1882)セザンヌ「カード遊びをする人たち」(1892)*1を筆頭に、モネ、ピサロルノワールセザンヌドガ、スーラ、ロートレックモディリアーニらの名品が並びます。

その多くは、上述の「コートールド・コレクション展」で観ていますが、今回初めて観て深い感銘を受けたのは、2階の4号室に展示されていたゴッホ「包帯をした自画像」(1889)でした。有名な「耳切り事件」の後、病院から退院して間もなく描かれた自画像です。耳に包帯をした画家は、人生に倦んだ老人のようで、とても当時36歳の肖像画とは思えません。諦観の滲む表情は、扉をはさんで対になって展示されている同時期の「アルルのラ・クロー:花咲く桃の木」(1889)の澄明さと好対照でした。

また、特別展「ターナーの水彩画」がちょうど昨日から始まったところでした。嵐の去った明け方の砂浜で、主人を失った犬がむなしく吠える「難破の後の夜明け」(1841)が印象的でした。

そのほかにも中世美術やルーベンスの大作が並び、壮観でした。私の知る限り、これだけの質と量を誇る個人の美術コレクションは、フィラデルフィアのバーンズ・コレクションとワシントンD.C.のフィリップス・コレクションくらいではないでしょうか。

*1:ほぼ同時期に同じ構図で描かれた3点のうちの1点。他の2点はオルセーとルーヴルにあり、いずれも甲乙つけがたい名品です。