竹本伊達大夫師匠逝去

Wilm2008-07-04

深夜帰宅すると、長女が悲しそうな顔で「伊達大夫さんが亡くなった。」と言います。「えっ。」と驚いて、長女が差し出す日経夕刊を見ると、「追想録」に回顧記事が出ていました。ショックだったのは、亡くなったのが5月25日と1ケ月以上も前だったことです。昨秋以来、病気休演が続いていたので、心配していたのですが、亡くなっていたとは知りませんでした。迂闊にも、報道を見落としていました。

昨年7月に国立文楽劇場で観た「夏祭浪花鑑」の義平次が私にとっての伊達大夫師匠の最後の姿になってしまいました。舅の権威を笠に着るあまり、堪忍袋の緒が切れた団七に田圃の中で泥まみれになって斬殺される役どころです。義平次は、伊達大夫師匠の当たり役だったそうですが、それが最初で最後になりました。団七の綱大夫との激しい応酬は、玉也と勘十郎の遣う人形と相俟って、今思い返しても、鳥肌が立つような迫力でした。味のある語り口の大夫だったので、惜しまれてなりません。ご冥福をお祈り申し上げます。