中村晋也美術館

鹿児島市街を抜け、武岡トンネルをくぐって、鹿児島西ICから南九州自動車道に乗る。最初の松元ICで降り、開けた住宅街を進むと、中村晋也美術館への入口があった。駐車場に車を停めて入館する。靖國神社遊就館に展示してあった彫刻「かへりみはせじ」を見て感銘を受けたので、彫刻家の活躍の地・鹿児島を訪れる折には、美術館にも足を運ぼうと決めていたのである。一昨日、花瀬望比公園で「比島戦没者慰霊碑」を見、昨日、指宿海軍航空基地跡・慰霊碑公園で「かもめの碑」を見て、さらにその意を強くした。

1・2階では、特別展「中村晋也の下に集う彫刻家展」が開かれており、佳作も多くあったが、やはり見応えのあるのは、中村晋也の作品だ。圧巻は、3階に展示されている「釈迦十大弟子」(2003)と「ミゼレーレI」「ミゼレーレII」(1995)の連作である。前者は、奈良の薬師寺大講堂に奉納されたもので、いずれの像も、厳しい中に慈悲を秘めた表情をしている。後者は、「救い給え」という意味の作品名さながらに、目を閉じ切に祈る人々の姿が印象的だ。そのほか、ヴァーグナーの楽劇「ヴァルキューレ」に題材を採った「愛の国伝説」(1999)が、ロダンの「地獄門」を彷彿とさせるようなレリーフだった。

2階の展示室に眼鏡をかけた柔和な表情の老紳士がいた。中村晋也その人だったように思う。ますますのご活躍をお祈りしたい。