新日本石油基地

鹿児島JCTで、九州自動車道からそのまま指宿スカイラインに乗る。山間の道を走っていく。途中、展望台で下車したが、桜島は霞んで見えなかった。知覧ICで降り、海岸まで下っていく。喜入の道の駅で昼食をとってから、鹿児島での第一の目的地、新日本石油基地株式会社・喜入基地に行く。ここは、57基の巨大原油タンク*1を擁し、貯油能力735万klと、世界最大級の原油中継備蓄基地なのである。あらかじめ、見学の予約をしておいた。正門の警備員室で来訪者バッジを受け取り、事務所に行くと、玄関で総務部のY氏が出迎えてくださった。何と、今日の見学は我が家1組だけだという。まあ、ふつう家族旅行で来たりはしないだろう。

見学者ホールで原油の採掘から石油製品の精製に至る過程を説明した映画を観た後、Y氏が喜入基地の説明をしてくださる。日本に8箇所ある新日本石油の製油所*2には、原油を満載した30万t級のタンカーが着岸できないので、喜入基地でいったん荷揚げした後、10万t級タンカーに小分けして二次輸送するという。新日本石油向けの原油輸入だけを担当しているにも関わらず、2005年度の輸入額では、全国第12位*3の貿易港というのだから、たいしたものである。タグボート3隻、消防車4台も自前で保有している。

その後、Y氏自らハンドルを握るマイクロバスに乗車し、基地内見学に出発した。16万kl級になると、高さ23m、直径100mにもなる油槽が約2百万平方メートルの広大な敷地に立ち並ぶ様は、壮観としか言いようがない。5箇所ある桟橋のうち、1-4号桟橋すべてに大型タンカー*4が着岸し、荷役作業中だった。構内を縦横に走るパイプラインの中で最も径の大きい60インチ管の輪切りが原料岸壁の脇に展示してあったが、中に次女が楽々立つことができた。

構内を一回りした後、事務所に戻る。我々に1時間以上お付き合いくださったY氏にお礼を述べて辞す。正門の近くには、喜入を母港として原油輸送に活躍し、1985年に退役した巨大タンカー「日石丸」(37万t)の主錨が屋外展示してあった。高さ6m、重さ24.6tもある。日本のエネルギー消費を支えている施設を見学することができたのは幸いであった。家族4人とも、すっかりENEOSのファンになって基地を後にしたのだから、Y氏の努力も報われよう。

*1:16万kl級24基、10万kl級30基、5万kl級3基。うち、16万kl級11基、10万kl級7基、計254万kl分が国家備蓄原油用に賃貸されている。

*2:北から室蘭、仙台、富山、横浜、根岸、大阪、水島、麻里布。

*3:成田空港、東京、名古屋、大阪、横浜、千葉、関西空港、神戸、川崎、水島、四日市、喜入。

*4:日本郵船立山」(16万t)、川崎汽船「SINGAPORE RIVER」(10万t)、新日本石油「根岸丸」(10万t)、雄洋海運「東雄丸」(5.5万t)。これらのうち、「東雄丸」だけ船名が見えなかったが、帰宅後、煙突のファンネル・マーク(赤の帯に白抜きの「Y」)から雄洋海運の船であることがわかり、同社のホームページを見たところ、同社が運航している原油タンカーは「東雄丸」だけであることを突き止めた。