上海市内観光

昼過ぎに仕事が終わり、新天地へ行く。煉瓦造りの石庫門建築を改造してショッピングモールにした街区である。横浜の赤レンガ倉庫のような趣向だ。煉瓦の壁に挟まれた石畳の小路は、独特の風情がある。上海料理店の「新吉士酒樓」に入る。ここの上海蟹の麻婆豆腐は絶品だった。ほかにも、豚の角煮、海老チリソース、小龍包、いずれも日本では食べられない味だ。中国出張は、食事が楽しみの一つである。

フライトまで少し時間があるので、上海老街へ行く。古い瓦葺の建物が軒を連ね、上海情緒満点である。骨董品屋や土産物屋が多く、「シャチョー、ヤスイヨ。ダイジョブ。」と客引きが寄ってくる。印鑑屋の前には「現場ごほります5分間程きまごす」という日本語の看板がある。言いたいことはわからなくもないが、「We can carve your name in 5 minutes.」という英語表記の正確さとの落差を何とかしてほしいものだ。

続いて、城隍廟へ行く。古い道教寺院である。50元の参拝料を払って境内に入る。本殿の前には、線香を焚く香炉がある。「全家福」*1と書かれた、薪の束のような線香を買う。土地の人の作法に倣って、四方に礼をしてから、香炉に線香をくべる。

主廟の霍光殿に祀られている神様は、いずれも金色に輝き、仏教寺院の厳かな仏像とは趣を異にする。しかし、土地の人たちは、深々と跪いている。かなりの信仰を集めているようだ。一番奥の城隍殿に祀られているのは、閻魔大王のような真っ赤な顔の神様だった。

城隍廟を出て豫園商場へ抜ける。さしずめ、城隍廟の門前町なのだろう。ちょっとした天守閣のような建物が軒を接して並び、中は飲食店や土産物屋になっている。賑やかな豫園商場を一回りすると、汗だくになった。池を対角線状に横切る九曲橋の真ん中に建つ湖心亭(写真)でお茶にする。ガラスのポットの中で花開くジャスミンティーを飲む。2階の窓際の席からは、豫園の木立の向こうに東方明珠塔が見えた。古いものと新しいものが調和もせずに同居しているのが上海の面白いところだ。このあたりで時間切れ。豫園見学は次の機会に譲って、タクシーに乗る。南浦大橋を渡って浦東地区へ戻る。

*1:「一家幸福」といった意味か。シンボルマークとして描かれていたのは、卍ではなく、逆卍即ちスワスチカだった。ユダヤ人観光客は眉をひそめるだろう。