「ゴジラ」の実写兵器

映画「ゴジラ」(1954)には、さまざまな兵器の実写が出てくる。当時最新鋭のものばかりであり、再軍備を果たした日本人の誇りが滲み出てくるようだ。主なものは以下の通り。
【巡視船PM20「こうず」・PM21「しきね」】
大戸島災害調査団の一行を運ぶのは、新鋭巡視船PM21「しきね」(1952年1月就役)である。ただし、艦影の実写は、巡視船PM20「こうず」(1951年12月就役)のものだ。ゴジラ攻撃隊が乗り組むのも「しきね」という設定だが、こちらの艦影は、模型で撮影されている。艦上撮影は、一貫して「しきね」で行われ、艦影撮影には「こうず」を用いたもののようだ。なお、「しきね」と「こうず」は、1953年9月に噴火した明神礁に関わっている。漁船・第十一明神丸からの海底火山噴火の通報を受けて現場に急行したのは「しきね」、観測調査に出かけたまま行方不明となった第五海洋丸の捜索に従事し、遺留品を発見したのは「こうず」である。

【シコルスキーS55】
大戸島災害調査団の先遣隊が大戸島に上陸するのに使用したのが、海上保安庁が1948年に導入した世界初の実用量産型ヘリコプター・シコルスキーS55である。大型ヘリコプターが空から舞い降りてくる姿は、当時の人々の目にはハイテクの象徴として映ったことだろう。同型機が所沢航空発祥記念館に保存されており、私も見たことがある。

【M24軽戦車】
ゴジラ攻撃のため、防衛隊が出動する場面で、1944年に実戦配備された米国の軽戦車M24*1が2両登場する。発砲場面は模型に置き換えられているが、実車が堂々と走行する場面を見ることができる。M24は、朝鮮戦争にも投入されたが、北朝鮮軍のソ連製T34/85戦車に歯が立たず*2、日本に引揚げた後、1952年に375両のM24が警察予備隊に供与されたという。

【M5牽引車】
防衛隊出動の場面で野戦砲を牽引するM5牽引車が3両登場する。

*1:映画「パリは燃えているか」でツィメリットコーティングを施したドイツ軍のパンター戦車に扮し、映画「バルジ大作戦」ではM60戦車扮するティーガーII戦車に撃破され、映画「レマゲン鉄橋」の冒頭で軽快に走った(低速度撮影という説もある)戦車である。

*2:それはそうだろう。M24の37.5口径75mm砲は、T34/76戦車を相手に苦戦したドイツ軍のIV号戦車(F2・G型)の43口径75mm砲より非力であり、T34の装甲を撃ち抜くことはなかったのではないか。