早稲田大学交響楽団カラヤン生誕100年記念演奏会

今年はカラヤン生誕100年にあたり、ヨーロッパでは様々な記念演奏会が開かれたようですが、国内では、カラヤン所縁の早稲田大学交響楽団が日本で唯一、カラヤン財団から公認を受けた記念演奏会を本拠地、早稲田大学大隈講堂で開催することになりました。前からこのオーケストラの実演を聴いてみたいと思っていたので、この報を知るや、同楽団のコンサート会員*1になり、入場券を手に入れました。

昨秋、創立125周年記念事業である大改修が竣工した大隈講堂に入ります。当日指定の座席は、2階E列24番でした。いい席です*2



15時開演。指揮は楽団永久名誉顧問の田中雅彦です。1曲目のヴェーバー「オイリアンテ」序曲を聴いただけで、この楽団が並々ならぬ腕前であることがわかります。弦楽セクションは、ボウイングが完璧に統一され、一糸乱れぬアンサンブルです。

メインは、シュトラウス英雄の生涯カラヤンの得意曲を捧げるという趣向でしょう。私の趣味からすれば、もう少しバリバリ、ドンパチやってもらいたい気もしますが、それは解釈の問題で、弦の合奏力や管楽器の首席奏者の技量は、並みのプロ・オーケストラを凌ぐと言ってもいいでしょう*3。特に、「英雄の業績」における「ドン・ファン」主題のオーボエ独奏には、思わずほろりとさせられるものがありました。カラヤンにとっても、いい手向けになったことでしょう。

休憩をはさんで後半は、サン=サーンスのチェロ協奏曲シェーンベルク編曲のバッハ「プレリュードとフーガ」。前半で大満足したので、後半はアンコールのつもりで聴きました。サン=サーンスは恥ずかしながら初めて聴きました。ドイツの若手チェリスト、ガブリエル・シュヴァーベが達者な独奏を聴かせました。シェーンベルクは編曲が退屈で、あまり感心しませんでした*4。できれば、前半と後半を入れ替えて演奏してくれればよかったのに、と思いました。

本当のアンコールは、1曲目が芥川也寸史「早稲田の栄光」。名曲の名演奏で、当楽団の独擅場でしょう。最後は、お定まりの東儀鉄笛「早稲田大学校歌」で締め括ります。私は、早稲田大学の卒業生ではありませんが、いずれの曲も強い感銘を受けました。

聞きしに勝るオーケストラでした。アマチュア独特の士気や集中力の高さに加え、プロ並みの演奏技術を備えているのですから、只者ではありません。このオーケストラの演奏会には、今後も足を運ぼうと思います。

*1:年会費500円で、演奏会のチケット代が500円割引になるので、1回で元が取れるお得な会員です。

*2:よくできた講堂は、講演者の声が隅々まで届くように音響設計されているので、短めの残響と明瞭な音像定位により、マルチマイク収録の録音のような響きがするものですが、大隈講堂もその一つのようです。私は、サントリーホールのような長めの残響よりも、このような音の方が好きです。

*3:何ヶ月もかけて数曲を仕上げるアマチュア・オケと週替わりで異なるプログラムをこなすプロを同列に論じられないという見方もありますが、一方で、音大卒業の一流奏者を揃え、練習と本番に日々専念する以上、それくらいのハンディは当然であり、比較は可能とも言えます。

*4:私はバッハの編曲物をあまり好みませんが、斎藤秀雄によるヴァーグナー風の「シャコンヌ」は感動的です。