十二月公演「源平布引滝」

文楽鑑賞教室が終わった後、続けて文楽十二月公演を観ます。出し物は、「源平布引滝」。二段目「義賢館の段」は1970年11月の国立劇場での通し狂言以来、38年ぶりの再演なのだそうです。これに三段目を加えた半通しの公演です。「源平布引滝」は、三段目が見取りで繰り返し上演されており、半通しでは三・四段目が多い中で、二・三段目の今回は珍しい上演形態のようです。

本作は、源氏の白旗の因縁を軸とする源平の攻防記です。今回の半通しでは、九郎助の娘・小まんが、文字通り命を賭して源氏の白旗を守り通し、息子の太郎吉が遺志を継ぐ様が描かれます。切り落とされた小まんの腕が白旗を掴んで離さなかったり、瀬尾が小まんの父であることを告白する「もどり」の後、自らの首を切り落としたり、忠義への執念を感じさせる場面が続きます。

十二月公演は、人間国宝ら年輩者が出演せず、中堅以下で上演されるのですが、みんな、ここぞとばかり気合いが入っているのが感じられました。太夫では、「義賢館」奥の呂勢大夫、「九郎助内」次の文字久大夫、同・前の千歳大夫、同・後の咲甫大夫らが渾身の語りで、上を目指す心意気が感じられました。三味線では、千歳大夫を支えた富助がいつもながら、美しい音色です。人形では、義賢の勘十郎・実盛の玉女の豪快さ、九郎助の玉也の枯れた味わい、葵御前の清十郎の上品さに加え、小まんの和生が大活躍でした。和生はおとなしくて控えめな印象があるのですが、ここのところ、芸風が大きくなってきたように思います。

11時から21時までの観劇で体力を消耗しましたが、充足感を抱いて帰途につくことができました。長女も、好きな時代物を堪能できて満足そうでした。