映画に登場するJu-52/3m

Ju-52/3mが登場する映画として忘れてならないのは、「荒鷲の要塞」(1968)と「空軍大戦略」(1969)です。

荒鷲の要塞の冒頭で、冬季迷彩塗装のJu-52/3mが雪山を背景に悠然と飛行し、英米軍の特殊部隊をヴェルフェン近郊の山中に降下させます。また、終結部で、同じJu-52/3mがオーバーハウゼン飛行場に強行着陸し、彼らを救出します。この1K+ZM号機(架空の機番です)に扮しているのは、撮影当時、まだスイス空軍の現役機だったA-702号機(後のJUエアHB-HOT)です。DC-3輸送機あたりにそれらしい塗装をしてごまかしても、大部分の観衆にはわからないものを、わざわざJu-52/3mの実機を借り出して、実際に飛ばしたところに製作者たちの拘りが感じられます*1。映像を注視すると、機体後部にうっすらと「702」の文字が見えます*2

「空軍大戦略のタイトルバックで、Ju-52/3mがドーヴァー海峡上を優雅に飛びます。この映画の製作にあたっては、He111爆撃機役のCASA2.111爆撃機やBf109E戦闘機役のHA1112戦闘機をスペイン空軍から大量に借り出していますので、このJu-52/3mも、おそらくスペイン製CASA352/352Lでしょう*3。映像からも、CASA型Ju-52/3mの特徴であるエンジンの長い排気管が見て取れます。さすがに、「荒鷲の要塞」のA-702号機のように、個体を特定することはできません*4
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*1:この映画には、ほかにもFl282回転翼機風のオートジャイロやAr96練習機風のT-6テキサン練習機などの航空機が登場しますが、実機はJu-52/3mだけです。

*2:オーバーハウゼン飛行場で、リチャード・バートンが滑走を始めたJu-52/3mに飛び乗る場面では、一瞬ですが、「702」の数字がはっきり見えます。

*3:Wikipedia英語版の「Battle of Britain (film)」の項では、2機のスペイン製Ju-52輸送機が使用されたと書かれています。

*4:現在、飛行可能なCASA352/352Lは、JUエアのHB-HOY、南アフリカ航空のZS-AFA、仏Amicale Jean-Baptiste SalisのF-AZJU、米Commemorative Air ForceのN352JUの4機。