テンシュテットの来日公演 目くるめくブルックナー

テンシュテット・ネタが続いていますが、今日は、ロンドン・フィルとの初来日公演の演奏会実況録音です。1984年4月11日、東京簡易保険ホールでの収録で、曲目は、シューベルトの「未完成」交響曲ブルックナーの第4交響曲です。

私は、この翌日に行われた名古屋公演を聴いています。名古屋市民会館での同じ曲目の演奏会で、これが私の最初で最後のテンシュテットの演奏会体験となりました。シューベルトはあまり記憶に残っていないのですが、ブルックナーは、テンポを大きく揺らした目くるめくような演奏で、こういうブルックナーもあるんだなあ、と感心したことを覚えています。その前日とは言え、自分の聴いた演奏を再確認したくなって、このCDを買いました。

シューベルトは、第1楽章はおとなしめの演奏ですが、第2楽章はじっくり踏みしめるような演奏です。マーラーもそうでしたが、テンシュテットの演奏には、どこか19世紀的な古風な響きがします。ギュンター・ヴァントを最後に、もはや聴くことのできなくなった音です。

ブルックナーは、前半2楽章は、重厚でオーソドックスな演奏です。言われなければ、イギリスのオーケストラとは分からないでしょう。しかし、第3楽章あたりから、「親分、そろそろ俺たちの演奏を始めましょうか。」というオーケストラの声が聞こえてきそうな、個性的な演奏になっていきます。終楽章は、テンポの揺れもさることながら、強弱のメリハリの利いた演奏で、下手な演奏にかかると退屈することの多いこの楽章を十分楽しませてくれます。どうやら、私の記憶はあまり間違っていなかったようです。

1枚目のCDの余白には、当日の会場練習風景が収録されています。しかし、対訳が付されていないので、テンシュテットの指示(ドイツ訛りのないきれいなブリティッシュです)がよく理解できないのが残念です。
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