4つの「ペレアスとメリザンド」

6月に新国立劇場ドビュッシーペレアスとメリザンド」の演奏会形式上演がかかるので、聴きに行くことにしました。私にとって、「ペレ・メリ」と言えば、シェーンベルクの後期ロマン派真っ只中の大管弦楽曲を意味するのですが、ドビュッシーのオペラも気になっていたのです。部分的にも聴いたことがないので、全曲盤を買う前に、安直に管弦楽編曲版を聴いてみることにしました。

入手可能なCDということになると、ボド盤、アッバード盤、2種のフルネ盤(都響とオランダ放送フィル)の四択です。フルネ盤はカップリング曲が地味なので、*1敬遠します。アッバード盤は、往年の名指揮者エーリヒ・ラインスドルフによる編曲というのが興味深かったのですが、カップリングの「牧神」「夜想曲」は、すでにCDを何枚も持っている曲です。というわけで、ドビュッシー交響曲(1902)、シベリウス組曲(1905)、シェーンベルク交響詩(1903)、フォーレ組曲(1898)と、同じ「ペレアスとメリザンド」に題材を取った4曲を2枚組に収めたボド盤を入手しました。

さっそく聴いてみると、ドビュッシー(コンスタン編曲)は、「夜想曲」や「海」を想起させるような、模糊とした響きで、全体が緩やかな波動を描いているような曲です。シベリウスシェーンベルクは、すでにバルビローリ盤の情念渦巻く演奏に親しんでいるので、ボド盤はちょっとおとなしめの印象を受けました。フォーレは、有名な「シチリアーノ」以外は初めて聴くのですが、メリザンドのはかない運命を象徴しているようで、心に沁みる曲でした。チェコ・フィルはフランス音楽のイメージじゃないなあ、とパターンに嵌った余計な心配をしていたのですが、杞憂だったようです。

ちょっと気になるのが、このCDのジャケットに用いられている象徴主義的な絵です。クノップフに「メリザンド」(1907)、ドニに「塔の花嫁」(1894)という、それぞれ「ペレアスとメリザンド」に題材を取った絵がありますが、いずれも異なります。いったい、誰の絵なんでしょう。どこにも表記がないのは困ったものです。
ペレアスとメリザンド

*1:都響盤は、ラモー「カストールとポリュックス」組曲とシュミット詩篇第47番。オランダ放送フィル盤は、イベール「寄港地」とデュリュフレ「3つの舞曲」。