「ながい旅」読了

大岡昇平「ながい旅」(角川文庫)*1を読了しました。映画「明日への遺言」の原作です。映画を観た後、すぐ買い求めて読み始めていたのですが、途中でほかの本が割り込んだので、今日ようやく読了しました。情報公開直後の公判記録と、岡田中将の遺稿をもとに、横浜軍事委員会での審理の過程を丁寧にたどったドキュメンタリーです。敗戦後もなお、軍事法廷で米軍を相手取って続行した岡田中将の「法戦」の模様が映画以上に克明に描き出されています。また、全文が収録されている岡田中将の遺書は、家族への情愛が溢れ、胸を打ちます。日本の再建を願い、青年の将来を慮りながら、従容として死に就いた岡田中将の遺志に応えるためにも、本書を読み継いでいく意義があると思いました。処刑直前の岡田中将の絶筆は、「隣に移る様な気で居り度い。」であったそうです。
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20080322
ながい旅 (角川文庫)

*1:新潮文庫版(1986年)は、角川文庫版が底本としている初版本(1982年)執筆後に発見された事実を反映した、より正確な記録になっているようですが、残念ながら、現在絶版で入手困難になっています。