オルセー美術館展

山登りの代わりに、東京都美術館で昨日から始まった「オルセー美術館展」を観に行く。「オルセー美術館展」は、今回で3回目だが、第1回(1996年)のつまらなさに失望して、第2回(1999年)は行かなかった。今回は、わりとよい作品が来ているようなので、出かけることにしたのである。

著名な作品としては、ホイッスラー「画家の母の肖像」(1871)、ピサロ「赤い屋根、村のはずれの冬の印象」(1877)、ゴッホ「アルルのゴッホの寝室」(1889)、セザンヌ「サン=ヴィクトワール山」(1890)、ゴーギャン「黄色いキリストのある自画像」(1891)、モネ「ルーアン大聖堂」(1893)などがある。ホイッスラーの大作が来たのはうれしい。ゴッホは、シカゴ美術館にある第1作よりも、第2作である本作の方が全体的にかっちり描きこまれた印象で、壁の肖像画も明らかに自画像とわかる。セザンヌも、数ある画家のサン=ヴィクトワール山の絵の中でも、構図的に安定し、たおやかな印象を与える。

今回は、地味ながらマネのいい作品が来ている。月影さやかな「ブーローニュ港の月光」(1868)、本展の広告ポスターにも用いられた「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」(1872)、波頭を巧みに描いた「アンリ・ロシュフォールの逃亡」(1881)である。特に、モリゾの肖像画は、本展の劈頭を飾ったモリゾ「ゆりかご」(1872)と呼応して、この母性愛溢れる画家の個性を描き出している。「マネの黒」*1が雄弁である。

「なんとか美術館展」の常として、玉石混交で、本当のマスターピースは来ていないのは、仕方ない。「フランスに行きたしと思へど、フランスはあまりに遠し」というほどではなくなったとは言え、依然、所帯持ちが気軽に行けるところではないのだ。向こうからやって来てくれるだけ、ありがたいと思わなければなるまい。上記の名品を観るだけでも価値がある。ただし、会期2日目にして、会場内はかなり混雑していたので、ご覧になりたい方は、早めに行かれるのがいいだろう。

*1:マネをこよなく愛する妻の名言である。