「明日の神話」第4原画
長崎原爆忌の日でもあるので、「明日の神話」に関連した「完成への道」展を岡本太郎美術館に観に行くことにする。生田緑地の駐車場に降り立つと、湿った緑の香りとヒグラシの鳴き声に包まれる。メタセコイアの林を抜けた奥に岡本太郎美術館がある。まず、カフェテリア「TARO」で腹ごしらえをする。
「完成への道」展は、壁画「明日の神話」(1968)の制作に至る過程をパネルで解説するとともに、当美術館が所蔵する第4原画(1968)と関連作品を展示したものである。圧巻は、やはり第4原画だ。壁画制作のための原画の最後のもので、177*1,085cmの大作である。メキシコの現場にいったん搬入され、依頼主を感動させたが、日本での美術展出展のため持ち帰られた。従って、壁画の制作は、一回り小さい第3原画(1967)*1に基づいて行われたという。
第4原画の全体の構図は、壁画とほぼ同じであるが、以下の点で異なる。
- 現場での階段との干渉の結果、壁画に施された左右下部のカットが本作にはない。
- その結果、壁画では画面右端で宙に浮いている第五福龍丸は、本作では水平線近くに描かれている。
- 壁画の左の方で、手を広げた人の形に見える黒い雲が、本作では、赤い巨大な目玉のように描かれている。
- その右横で、人を飲み込んでいく黒い奔流も本作だけに見られる。
- 中央の骸骨の周りの黒い人々は、壁画では踊っているように見えるが、本作では火焔に焼かれ身を捩っているように見える。
- キノコ雲の表情も、壁画よりは本作の方が禍禍しい。
これらの特徴から、第4原画は、壁画とは独立した美術作品としての価値があると言えるだろう。
企画展として「ウルトラマン伝説展」をやっていた。もちろん、ウルトラQやウルトラマンに関する諸々の展示物は懐かしいに決まっているのだが、なぜこの美術館が企画したのかは、よくわからなかった。
美術館の裏に立っている巨大な「母の像」(1971)を観てから帰途につく。