シノーポリのマーラー

21時からNHK教育の「思い出の名演奏」と題する番組で、1987年1月16日のフィルハーモニア管弦楽団来日公演の実況録画を放送していた。サントリーホールのオープニングシリーズの一環で、今は亡き名指揮者ジョゼッペ・シノーポリマーラーの第2交響曲を指揮した公演だ。私は、同じ演目でTVカメラの入らなかった1月19日の公演を聴いている。なかなかの名演だったことを今でも覚えている。特に、メゾソプラノヴァルトラウト・マイアーの大管弦楽・合唱を圧倒する強烈な歌唱が印象的だった。そして、それがシノーポリの指揮を実演で聴く最初で最後の機会となった*1

今日の放送は、何と、第1・2楽章を省略し、第3楽章以降だけだった。NHKは、もともと、交響曲の演奏録画を放送枠に無理矢理押し込めるために、中間楽章を省略する悪癖があるが、まさか、冒頭2楽章を省略するとは思わなかった。「これから映画『風と共に去りぬ』を放映しますが、長いので、最初の1時間半をカットします。」と言われたら、誰もまともな映画放映とは認めないだろう。それと同じことである。作品と演奏に対する冒瀆以外の何物でもない。NHKは、このような中途半端な放送をするくらいなら、著作権処理をしたうえで、全編をDVDとして発売してほしいものだ。

*1:シノーポリは、2001年4月20日、ベルリン・ドイツ・オペラで「アイーダ」第3幕を指揮中に心筋梗塞で倒れ、亡くなった。享年54歳。