帰国

日付変更線を越える頃、喉が渇いて目が覚めた。客室乗務員を呼んでペットボトルの水をもらう。日本時間で11時半。高度はFL370(11,277m)まで上昇していた。14時頃、海上に白い帯が幾筋も見える。最初、択捉島の川かと思ったが、スカイマップによれば、択捉島のかなり南を飛行しているので、見えるはずがない。とすれば、流氷だろう。日本が近づくにつれ、眼下は雲海になっていく。

対地速度は、常時720km/h前後だ。機内誌によれば、B777-200の巡航速度は890km/hとあるから、単純計算で約170km/hの向かい風に逆行していることになる。これでは、さすがに出発時の遅れを取り戻すのは無理のようで、到着予定時刻は16:00になっている。

15:20頃、FL330で福島沖を飛行していく。彼方に雪山が見える。安達太良山だろうか。帰途初めて見る日本の地だ。15:37に全日空B747、15:40にノースウェスト航空のB747がほぼ同じ高度の西側を反航していく。*1

やがて茨城県上空に入る。霞ヶ浦が見える。印旛沼の手前でぐるっと左旋回。15:49に16Rに着陸。16:00ちょうどに55分遅れで第2ターミナルの71番ゲートにスポットイン。これは評価できる。サテライトの端の方のゲートに着いたら、入国審査場まで行くのに10分はかかってしまう。55分遅れを10分だけ取り戻してくれたと考えることにしよう。ドアオープンがよく見える。B777のドアはちょっと浮いてから外に開き、前に移動する。

入国審査・税関検査・携帯電話の返却と駆け足で通り抜け、全日空の到着カウンターに行く。「お帰りハイヤーサービス」を予約してあるのだ。ハイヤーに乗車したのは16:25。急ぐのには訳がある。何と、これから横浜にコンサートを聴きに行くのである。サンフランシスコの出発が30分遅れた時点で遅刻を覚悟していたのだが、道路交通情報では、横浜までの所要時間は90分とある。間に合うかもしれない。東関道が空いているのは当然としても、習志野料金所、市川料金所とも渋滞なし。首都高湾岸線も空いている。

羽田空港がRWY22を着陸用の滑走路に使っているらしく、全日空機や日航機が東京湾の上を旋回しながら降下していく。航空旅行の後だけに、自然と旅客機に目が止まる。やがて羽田空港の横を通り、多摩川トンネル、川崎航路トンネルを次々とくぐると東扇島だ。JFE東日本製鉄所が左右に広がる。原料岸壁には、30万t級と思しき大型の原料運搬船と鉱石運搬船が荷揚げ中だった。喫水線がなかり上がっているので、ここが最後の荷揚げ地らしい。製鋼工場ではガス放散をしている。下工程でトラブルでもあって、製鉄所内のガス需給バランスが崩れているのだろう。

鶴見つばさ橋、横浜ベイブリッジを渡る。黄昏時の東京湾が美しい。薄暮に沈む対岸の新日鉄君津製鉄所が戦艦「大和」の艦影のようだ。17時半頃、みなとみらい出口で降り、会場のパシフィコ横浜ハイヤーを下車する。余裕で間に合った。

*1:帰宅後、成田空港のホームページで当日の出発便情報を調べると、全日空機はNH1972便エドモントン行き(チャーター便)、ノースウェスト機はNW2便ロスアンジェルス行きだったようだ。