レンブラント展

このままだと敗北感が残るので、会期末間際の「レンブラントレンブラント派」展を観に行くことにする。江戸の仇を長崎で討ってもよいのである。展覧会名から窺える通り、レンブラント作品の方が少ない(油彩は10点)せいか、国立西洋美術館の会場内はそれほど混んでいない。とは言え、圧巻はやはりレンブラント作品だ。「羊飼の礼拝」(1646)や「マグダラのマリアの前に現れるキリスト」(1651)は、この季節に相応しい佳品。「悲嘆にくれる預言者エレミア」(1630)の重厚さはレンブラントでしか味わえない。最も感銘を受けたのは、「聖ペテロの否認」(1660)だった。ペテロの宙をさまよう虚ろな視線は、人間の弱さを率直に表している。鑑賞者自らの鏡像として観るべき作品だろう。「黄金の兜の男」が研究成果を踏まえて、工房作品として展示されていたのは意外だった。レンブラント以外の作品では、リーフェンスの「ラザロの蘇生」(1631)がベックリン風の不気味さを漂わせていて印象的だった。

企画展の後、常設展も観る。久しぶりに松方コレクションを観たが、質・量とも大変なものであることを再認識した。本家本元のフランスや印象派偏愛のアメリカには敵わないとしても、アジア人の蒐集としては超一流と言っていいだろう。

企画展・常設展とも、聖書上の逸話・寓話を知らないがゆえに、全然理解できないものが多すぎることに閉口したので、「図説聖書物語・旧約篇」「同・新約篇」(河出書房新社)をミュージアムショップで買った。これで安直にキャッチアップしようという魂胆である。

時間と体力に余裕があれば、東郷青児美術館でやっている「ゴッホと花」展を観に行くつもりだったのだが、飽きまくった娘どものブーイングを俟つまでもなく、めげた。10年前のように、美術館や展覧会を平気で梯子する気力・体力は、いつの間にか萎えたようだ。
図説 聖書物語 旧約篇 (ふくろうの本) 図説 聖書物語 新約篇 (ふくろうの本)