ボリショイ・バレエのショスタコーヴィチ「明るい小川」
井上道義のホームページで、ボリショイ・バレエの来日公演のうち、ショスタコーヴィチの「明るい小川」を観に行く旨が書かれているのを読んで、私もがぜん行きたくなりました。
10日の公演で安くていい席が取れたので、終業後、上野に出かけて行きました。仕事がなかなか切り上げられなかったおかげで、東京文化会館に駆け込んだのは開演時間の19時ちょうど。4階最前列は女性ばかりで、中央付近の自分の席まで通してもらうと、「何や、このおっさん。」という目で見られました。
今回の来日公演で日本初演された曲なので*1、もちろん観るのは初めてですし、音楽も抜粋を聴いたことがあるだけです。何しろ、1935年に初演された後、翌年の「プラウダ」批判が契機となって70年近くもお蔵入りし、2003年になってようやくボリショイ劇場が再演したという曰く付きの曲です。
しかし、音楽は溌剌とし、筋書きは機知に富み、舞踊は「この人たちに地球の重力は作用していないのか。」と思うほど自由自在で、十二分に楽しむことができました。アナスタシア・ゴリャーチワ(ジーナ)、ナターリャ・オーシポワ(バレリーナ)、イワン・ワシーリエフ(ピュートル)ら、錚々たるソリストに混じって、岩田守弘(アコーディオン奏者)も活躍していました。また、本作の再演以来、「バレエ・ダンサー」役が当たり役となったセルゲイ・フィーリンは、おそらく今日が引退前最後の舞台になったはずで、その姿に接することができたのは貴重な体験でした。
パーヴェル・クリニチェフ指揮の劇場管弦楽団は、ショスタコーヴィチの多彩な音楽を覇気溢れる演奏で堪能させてくれました。
幕間に1階ロビーに降りてみると、観客は8割方バレエ・ファンの女性で、残り2割は、(私も含めて)バレエ公演にはおよそ縁のなさそうな場違いのおじさんたちです。昨秋、日比谷公会堂に通い詰めたショスタコーヴィチ・マニアたち*2に違いないとお見受けしました(私も含めて)。