グラインドボーンの「ペレアスとメリザンド」

28日に初台へ「ペレアスとメリザンド」を観に行くので、予習用のDVDを買いました。1999年のグラインドボーン音楽祭での公演の実況録画です。クリスティアーネ・エルツェは、美しく、謎めいたメリザンドのイメージ通りです。粗野なゴローのジョン・トムリンソン、ひ弱なペレアスのリチャード・クロフトらも好演しています。

何より素晴らしいのは、グラハム・ヴィックの演出です。全5幕の物語を一つの部屋の中で展開します。そのため、かなりの読み替えが行われていますが*1、このオペラのもつ独特の閉塞感を表現していると思いました。室内の装飾を始め、美術・意匠は、耽美的と言えるほどの美しさです。幕切れは、呆然と椅子に座るゴロー、食卓の上で白布を掛けられたメリザンドと、第1幕冒頭と同じ光景になります。この悲劇の輪廻が無限に繰り返されていくことを象徴しているようでした。

*1:一例を挙げると、第2幕の海辺の洞窟の場面で、3人の眠る浮浪者は、透明な床下で花に囲まれて眠るメリザンド、ゴロー、ペレアスの亡骸になっていました。ペレアスが彼らを見下ろしながら、“Nous reviendrons un autrre jour.”「いつの日かまたここに来るだろう。」と呟くように歌う場面は、3人の運命を予告していました。