カラヤンの最後の光芒

昨晩、TOKYO MXカラヤン指揮ヴィーン・フィルの演奏でブルックナーの第8交響曲の録画を放送していました。カラヤン生誕100年を記念した企画のようです。しかし、残響が長い録音のせいか、縦の線があまり揃っていない感じがして、今一つ感心しませんでした。こんなはずではないんだけどな、と思って、今日、同じコンビのブルックナー第7交響曲のCDを聴きました。1989年4月18-23日の録音で、このわずか3ケ月後の7月16日にカラヤンはこの世を去りました。彼の生涯最後の録音と言われているものです。

演奏は、明るく滑らかで、輝かしい光芒を放っています。中には、「こんなのはブルックナーではない。」と言う人がいるかもしれません。しかし、オーストリアの音楽家たちによる演奏を否定する勇気は、私にはありません。むしろ、この若々しい響きを81歳の老指揮者が紡ぎ出したことに驚嘆します。おそらく、カラヤンは、生涯を通じて老熟することを拒んでいたのではないでしょうか。ブルックナー交響曲の中で最も明るく美しい第7が最後の録音となったのも、神様の恩寵だったのかもしれません。
ブルックナー:交響曲第7番