「マタイ受難曲」 最高の音楽体験

聖トーマス教会合唱団・ライプツィヒ・ゲヴァントハンス管弦楽団による「マタイ受難曲」を聴きに行きました。サントリーホールの席で妻と落ち合います。私は、昨年夏に出張でライプツィヒに行った際、聖トーマス教会を訪れ、バッハの墓に詣でました。わずか2日間の滞在では、合唱団を聴く機会にも恵まれず、売店でCDを買うのみでした。ところが、帰国後間もなく、2008年3月に来日公演があることを知り、迷わず予約していたものです。

期待通りと言うか、期待以上の演奏でした。私は、つねづね、「マタイ受難曲」が西洋音楽の最高峰で、以降の作曲家たちはつらいことだなあ、と思っているのですが、それを再確認させてくれました。サントリーホールの長めの残響が教会を想起させ、至福のときが流れていきます。歳とともに涙腺が弱くなっているのか、演奏中、何度も涙が溢れてしまいました。私にとって、これまでの音楽体験の中で屈指の演奏会となりました。

合唱団は、第31代トーマスカントールのゲオルク・クリストフ・ビラーの指揮のもと、丁寧な歌唱を展開します。少年合唱は、技術面では女声合唱に劣るかもしれませんが、その清澄な歌声は、この曲にふさわしく思えました。独唱陣も、エヴァンゲリストマルティン・ペッツォルト、キリストのマティアス・ヴァイヒェルトを始め、安定した歌唱を聴かせてくれました。ゲヴァントハウス管弦楽団は、初めて演奏会を聴きましたが、美しい音色でした。

昨年のショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏、都響の第九と、演奏会は当たりが続いています。次は、4月の都響マーラー第8交響曲です。