「妖精」 ヴァーグナーの全オペラ制覇

妻と新国立劇場へ東京オペラ・プロデュースの公演を観に出かけました。ヴァーグナーの処女作「妖精」(1834)です。もちろん、初めて観るオペラです。「魔法」「試練」「石化」などのモチーフが用いられており、「魔笛」から「魔弾の射手」を経て「影のない女」へと続くドイツ・ロマンティック・オペラの系譜に属する作品と言えるでしょう。また、「禁断の質問」「竪琴」「指環」など、後の作品の萌芽が見られるのも興味深いところです。


手堅い演出・演奏
松尾洋(八木清市補完)の演出は、奇を衒わず、この作品のロマンティックな性格を正攻法で表現していました。日本初演(16日)だけに、本来の姿をきちんと提示しようという姿勢に好感が持てました。歌唱陣では、何と言っても、アーダの大隅智佳子が声量・技術ともに圧倒的な歌唱を聴かせました。役柄への没入も尋常ではありません。まだ大学院在学中の若手のようですが、逸材です。将来、この人のブリュンヒルデを聴いてみたいと思いました。アリンダル王子の内山省吾も負けじと頑張っていました。東京ユニヴァーサル・フィルは、マルコ・ティトットの自信溢れる指揮のもと、力演でした。

これで、私は、ヴァーグナーが完成したオペラ13作品*1の舞台上演をすべて観ることができました。次に目指すのは、プッチーニシュトラウスですが、いずれも道のりは遠そうです。


松尾氏ご逝去
演出の松尾洋氏は、この公演の成功を見届けたかのように、翌18日にご逝去されました。享年65歳。東京オペラ・プロデュースを率いて、意欲的な活動を展開し、日本のオペラの発展に貢献した方でした。ご冥福をお祈り申し上げます。

*1:「妖精」「恋愛禁制」「リエンツィ」「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」「トリスタンとイゾルデ」「ニュールンベルクのマイスタージンガー」「ラインの黄金」「ヴァルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」「パルジファル