「ダーク・ブルー」 軟弱な青春戦争映画

前から観たいと思っていた映画「ダーク・ブルー」のDVDを借りてきました。バトル・オヴ・ブリテンに参戦したチェコ義勇兵たちの戦前・戦中・戦後を描いた映画です。彼らが、社会主義体制となった祖国へ戻ると、強制収容所に収監されて虐待を受けたという歴史秘話は、この映画で初めて知りました。スピットファイア戦闘機も実機2機が画面を縦横に飛び回りますし、空戦場面も新鮮な表現が見られました。

しかし、残念ながら、私はこの映画を買いません。上記のようないい素材を扱いながら、結局、友情や恋愛の描写に著しく傾斜しています。義勇兵たちは、ドイツに対する敵愾心に駆り立てられている様子もなく、酒色の合間に出撃しているようにしか見えません。これでは「祖国がナチスに蹂躙されている間、第三国で色恋に耽っていたのだから、強制収容所行きは当然の報いだ。」といった誤解が生じかねないでしょう。チェコ義勇兵の活躍という点では、「空軍大戦略」の方が的確に描いていると思います。

宮崎駿をはじめ、スタジオジブリのおじさんたちがこの映画のどこが気に入ったのか、よく理解できないまま、DVDを返却したのでした。やはり、私にとって、バトル・オヴ・ブリテンを描いた戦争映画の最高傑作は「空軍大戦略*1であることを確信させてくれました。

以下の部分はネタバレです。本作をご覧になった方、ご覧になる予定のない方だけ文字を反転してお読みください。
カレルの最期もよくわからないところです。自機もろとも海に突入したところで、救命ボートだけが浮上する保証はどこにもないのですから、漂流中のフランタを救えるとは限りません。展開した救命ボートを操縦席から投下した方が確実です。海中突入は、決して合理的な選択とは言えないので、失速による事故と見るべきでしょう。しかし、製作者は、カレルの自己犠牲として描きたいらしく、どうも腑に落ちないことです。
ダーク・ブルー [DVD] 空軍大戦略 (ベストヒット・セレクション) [DVD]

*1:このB級映画のような邦題を何とかしてくれ、と思っているのですが、最近のDVDのパッケージは「BATTLE OF BRITEN」という原題の表記を大きくしているので、いい傾向です。