「シュレック3」

長女の期末試験が終わり、天気もぱっとしないので、家族で新百合丘に映画「シュレック3」を観に出かける。我が家は、「シュレック」シリーズの大ファンである。

CGは、物の質感、光、空気感、いずれを取っても完成の域に達しており、もはやCGであることを意識させない。まるで、現実の三次元空間の中で三次元キャラクタが演じているようだ。視線の設計も巧みで、「演技」が自然に感じられる。

しかし、前2作に比べて、脚本が弱くなってしまったのは否めない。小ネタの連続、という感じで、大きな物語の流れがない。これは、登場キャラクタが多すぎることにも一因するだろう。性格の悪いおとぎ話のお姫様たちは、扱いによってはもっと面白くなったのだろうが、単なる狂言回しに終わっている。他方、おとぎ話の悪役たちは、チャーミング王子に煽動され、悪役の汚名を雪ぐために蜂起するのだが、所期の目的は次第に曖昧になってしまう。

本作で「何か別のもの」になれたのは、棚ボタ式に王位を継承したアーサーだけだ。何の努力もしないで王冠を戴いた高校生が「夢の実現を妨げるのは自分自身だ。」と説教を垂れても、誰の共感も得られないだろう。これまで、「人は見かけではない。」という重要なモチーフを提示してきた本シリーズが、「ハリー・ポッター」のような「選良」映画に堕してしまったのは残念と言うほかない。

とかいう理屈っぽい話もさることながら、最大の不満は、人間のフィオナ姫が一度も登場しないことだ。「フィオナのテーマ」とも呼ぶべき、感動的な"IT IS YOU (I HAVE LOVED)"もほとんど流れないので、本シリーズがもはや、シュレックとフィオナの愛の物語ではなくなってしまったことを痛感する。

パンフレットの解説によると、本シリーズは五部作として構想されているそうだ。原点に回帰した「シュレック4」が観られるように、本作の興行的成功を祈りたい。

終了後、娘たちに感想を尋ねると、長女は「今一だね。」と苦笑し、次女は「これだったら、『不死鳥の騎士団』を観るべきよ。」と自分の観たい映画にしっかり導線を張っていた。今月は、「不死鳥の騎士団」と「レミーのおいしいレストラン」を観に行くことになりそうだ。

帰宅後、第1作の「シュレック」のDVDを観る。やはり、クライマックスは、目頭が熱くなる。
シュレック & シュレック 2 ツインパック [DVD]