井上道義のモーツァルト
先日、HMVで取り寄せた、井上道義指揮アンサンブル金沢のモーツァルト交響曲集のCDを聴く。「音楽監督就任記念アルバム」と銘打って、第39・40・41番を収録したCDだ。第39番の序奏で、知らない曲が始まったのかと思うほど管弦のバランスが通常と異なり、びっくりするが、提示部に入ると、歯切れのいい疾走感のある演奏になる。私好みの演奏だ。ピリオド奏法を採り入れてはいるものの、第40番の第1楽章冒頭の主題にポルタメントをかけるなど、流行に迎合しない井上道義の主張が明確である。3曲ともよいが、毅然とした表情の第41番に最も指揮者の個性が現れている。
アンサンブル金沢は、岩城宏之の時代に一度聴いてみたいと思いながら、結局果たすことができなかった。実演を聴いたことはないが、CDで聴く限り、優れたアンサンブルだ。今は亡き岩城の訓練による成果だろう。この室内オーケストラを井上道義の指揮で聴ける金沢市民がうらやましい限りである。