「謎解き広重「江戸百」」読了

原信田実「謎解き広重「江戸百」」を読了した。歌川広重最晩年の傑作「名所江戸百景」の主要作品について、当時の時代背景と習俗から、絵の背景に隠されたメッセージを読み取ろうという試みである。中には、やや牽強付会では、と思われる解釈もあるが、連作開始の前年・安政2年(1855年)10月2日(旧暦)に起きた安政地震*1の災害からの復興が画中に記録されているという指摘は興味深い。史料の中から傍証となる事実を丹念に拾い集める姿勢には好感が持てる。目録の順番ではなく、制作年月順に全118点のサムネイルを載せた巻末付録も貴重だ。

著者は、本書の刊行を待たず、2007年1月に病気で亡くなっている。本書は、絶筆である。ご冥福をお祈りする。
謎解き 広重「江戸百」 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

*1:M7.0-7.1。