シノポリのマーラー第9

夜、先日HMVで取り寄せたシノポリ指揮ドレスデン国立管弦楽団マーラー交響曲第9番のCDを聴く。全曲約92分という驚異的に遅い演奏時間に気を惹かれ、「トロけるような官能と陶酔」という宣伝文句を真に受けたのが悪いとは言え、期待にはほど遠い演奏だった。確かにテンポは遅いのだが、「幽(かそけ)し」とでも形容すべき、さやさやとした演奏である。私は、天上的な第9と言えども、もっと力感のある演奏を好む。トランペットが強奏すると音が割れるのもいただけない。オーケストラも明らかにこの曲、と言うより、マーラーの演奏に慣れておらず*1、たどたどしい。いろいろな意味で、ヴァルター指揮ヴィーン・フィルの1938年盤をうんと遅くした演奏、といった感じである。

*1:私の知る限り、ドレスデン国立管弦楽団マーラー演奏の正規録音は、ズイトナーと若杉の第1、シノポリの「大地の歌」の2曲3種のみだ。