「文楽の女たち」読了

大谷晃一*1文楽の女たち」(文春新書)を読了する。「曾根崎心中」「冥土の飛脚」「仮名手本忠臣蔵」「夫婦善哉」など古今の文楽の名作12編の女性主人公を紹介した本だ。「五十年忌歌念仏」や「八百屋お七恋緋桜」*2などの珍しい作品も紹介されている。物語を追いながら、大阪女の気質を抽出しようとしているのが興味深い(昔の文楽作家たちにによる理想像ではあるが)。特に、最後の「夫婦善哉」の後日談には、ほろりとさせられる。こういう本を読むと、文楽が大阪の歴史・文化に深く根ざした古典芸能であることがよくわかる。

先日読了した葛西聖司文楽のツボ」も面白い本だった。題号通り、主要な文楽作品の見所を懇切丁寧に解説したものだ。文楽初心者にはうってつけの本である。著者の文楽に対する造詣の深さに感心させられる。
文楽の女たち (文春新書) 大阪学 (新潮文庫) asin:4140881828

*1:同じ著者の「大阪学」(新潮文庫)も大阪の文化・風俗の優れた解説書だった。

*2:本作の一部を改作した「伊達娘恋緋鹿子」は現在も上演される。長女が昨年12月の文楽鑑賞教室で観ている。私も行くべきだったと今更ながら悔やんでいる。