パプリカ

夜、チネチッタに映画「パプリカ」を観に行く。21:40からの回である。

面白い映画だった。CGを濫用せず、セル画を中心にこれだけ稠密な絵を描いたのは賞賛に値する。現時点での、日本のアニメーション映画の頂点を示していると言っていいだろう。主題や世界観は「攻殻機動隊」や「イノセンス」ほど広く深くはないが、「夢」という人間的な題材なので、登場人物の感情をきちんと描いているのがよい。粉川刑事、時田、千葉らのエピソードは心温まる。技術的な精緻さと人間的な温もりを両立させたところが本作の魅力だろう。平沢進の音楽もすばらしい。「明るい悪夢」を垣間見たい人にお勧めだ。

惜しまれるのは、キャラクターデザインが声優のダブりもあって、どうも「千と千尋の神隠し」「イノセンス」を想起させてしまう。
粉川刑事「荻野千尋のお父さんって、ああ見えても刑事だったんだ。」
乾理事長「キムさん、あんた、電脳を破壊されて死んだはずでは?」
小山内「トグサは、あのあと公安9課を退職して精神科医に転職したのか。」
といった感じである。

恥ずかしながら、原作はまだ読んでいない。筒井康隆は、学生の頃は好きな作家だったが、「虚航船団」*1を最後に何となく遠ざかってしまった。amazonで取り寄せたので、これから読もう。

*1:偽史とSFを組み合わせた壮大な作品である。感動的な最後の台詞は、「パプリカ」につながっていくものを感じさせる。