セルとクリーヴランド管弦楽団

昨日、長女の学園祭でモーツァルトの「魔笛」序曲を聴いたので、俄かにジョージ・セルのモーツァルトが聴きたくなり、K.550の交響曲を聴いた。1970年5月22日、セルの最初で最後の来日公演となった演奏会の実況録音である。「玲瓏」という言葉は、このような演奏のためにあると思う。私は、セルの遺したモーツァルト交響曲*1やピアノ協奏曲*2の録音がボックスセットになるのを辛抱強く待っている。

クリーヴランド管弦楽団の演奏は、とても実況録音とは思えない完璧さだ。セルに四半世紀も鍛えられた末に到達した至高の境地である。来日公演後間もなくセルが急逝(1970年7月30日)した後も、ブーレーズマゼール、ドホナーニと、音に異様に厳しい指揮者ばかり好んで音楽監督に戴いている。私は、ドホナーニ全盛期の1992年に2回、本拠地のセヴァランス・ホールでこのオーケストラを聴く機会に恵まれた。アシュケナージ指揮のショスタコーヴィチ(第8交響曲)はまあまあであったが、ドホナーニ指揮によるモーツァルトのK.595の協奏曲(独奏はピリス!)とマーラーの第4交響曲(独唱アップショウ)は、この世のものとも思われない清冽かつ繊細な演奏だった。

今の音楽監督は誰だろうと思って、オーケストラのホームページを見たら、フランツ・ヴェルザー-メストだった。このオーケストラは、よくよく練習で絞られるのが好きと見える。

*1:第28・33・35・39・40・41番の6曲。第38番を録音しなかったのが惜しまれる。

*2:第10・12・15・17-27番の14曲。独奏はカサドジュとゼルキン父。