ショルティのDVD

NHKエンタープライズからゲオルク・ショルティの来日公演実況録画のDVDが出た。1963年4月29日のロンドン交響楽団とのものと、1994年10月3日のヴィーン・フィルとのものである。1ケ月以上も前からHMVに予約していたものが、今日届いたので、前者を視聴する。当日の曲目は、
(1)ベートーヴェン「エグモント」序曲
(2)同・第4交響曲
(3)同・第7交響曲
(4)ヴァーグナーローエングリン」第3幕への前奏曲(アンコール)
(5)ブラームスハンガリー舞曲」第5番(同)
だったようだが、このDVDには、(2)(4)(5)が収録されている。時間的には、(3)も収録できたはずだが、ヴィーン・フィルのものと重複するので省いたのだろうか。ファンとしては、聴き比べができて面白かったのに。つまらないことをするものだ。

はっきり言って、音質・画質とも悪い。ダイナミックレンジが狭く、歪みが多い音で、絵がなければ商品価値を問われるレベルだ。画質の方も、一応アナログビデオなので、ノイズは少ないが*1、細部がべったりつぶれた絵で、音楽鑑賞用というよりは、ドキュメンタリーと言った方がよい。演奏は、壮年期のショルティロンドン交響楽団を振ったものなので、悪いはずがないのだが、いかんせん、古い記録映画を観ている以上の心理状態になれない。私のような筋金入りのショルティ・ファンでない限り、手を出さない方が無難だろう。

帯には麗々しく「ネビル・マリナーの若き姿を収録!」と書かれているが、第2ヴァイオリン首席はほとんど映らない。それよりも、トロンボーンの神様と呼ばれたデニス・ウィック(アンコール曲のみ)や名ホルン奏者アラン・シヴィルの姿を見ることができる。付録のメンバー表には、バリー・タックウェルの名前があるが、特定できなかった(この日は出演していなかったのかもしれない)。

一方のヴィーン・フィルがどんな音質・画質なのか心配になったので、冒頭を観てみる。こちらは、さすがに明瞭な音質・画質だったので安心した。何しろ、私は、この演奏会を聴きに行っているのだ。私にとって、これが私にとってショルティの最後の演奏会になったので*2、DVDフォーマットに固定されたのは大歓迎なのである。こちらは、後日改めて視聴することにしよう。

私は、都合6回、ショルティの演奏会に足を運んだ。これらの圧倒的な名演の数々は、今も忘れることができない。

曲目 オーケストラ 会場
1986 3 26 モーツァルト交響曲第35番 シカゴ響 東京文化会館
1986 3 26 マーラー交響曲第5番 シカゴ響 東京文化会館
1986 3 27 ハイドン交響曲第95番 シカゴ響 昭和女子大人見記念講堂
1986 3 27 ブルックナー交響曲第7番 シカゴ響 昭和女子大人見記念講堂
1990 4 11 ブルックナー交響曲第8番 シカゴ響 サントリーホール
1990 4 12 モーツァルト交響曲第39番 シカゴ響 東京文化会館
1990 4 12 ショスタコーヴィチ交響曲第8番 シカゴ響 東京文化会館
1992 11 13 ハイドン交響曲第104番 シカゴ響 シカゴ・オーケストラホール
1992 11 13 ブルックナー交響曲第3番 シカゴ響 シカゴ・オーケストラホール
1994 10 3 ヴァーグナー「トリスタン」前奏曲 ヴィーン・フィル サントリーホール
1994 10 3 シュトラウス「ティル」 ヴィーン・フィル サントリーホール
1994 10 3 ベートーヴェン交響曲第7番 ヴィーン・フィル サントリーホール
1994 10 3 ヴァーグナーマイスタージンガー前奏曲 ヴィーン・フィル サントリーホール

ゲオルグ・ショルティ/ロンドン交響楽団 1963年日本公演 [DVD] ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1994年日本公演 [DVD]

*1:なぜか、ショルティのアップ場面にのみゴーストノイズが乗るので、憑依霊のようで目障りである。

*2:ショルティは、この演奏会の約3年後、1997年9月5日に亡くなった。享年84歳。