「アデーレ・ブロッホ-バウアーI」売却決定

ニューヨーク・タイムズの報道によると、ブロッホ-バウアー・コレクションのクリムト5点のうち、「アデーレ・ブロッホ-バウアーI」(1907)がマンハッタンのノイエ・ギャラリー(Neue Galerie)に推定$135M(約155億円)で売却されることが決まったそうだ。早晩売却されるのは予想されたことだ。新しい所有者がどうしようと任意である。売却額も、この絵にこれだけの価値があると認めた美術館があったということ自体はよいことだ(投資が回収できるのかという企業財務的な観点は無用だろう)。問題は、売り方である。一番高く売れそうなものから切り売りしていくという手口には、作品に対する愛情がまったく感じられない。相続人たちにとっては、クリムトの絵だろうと、宝飾品だろうと、不動産だろうと、要は高く売れさえすれば、何でもよかったに違いない。
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20060507

他の4作品は、7月13日から9月18日までの間、「アデーレ・ブロッホ-バウアーI」とともにノイエ・ギャラリーで展示された後、サザビーズの競売にかけられるとのことだ。この期間に、マンハッタンに旅行か出張で出かける人には、ぜひ一見を勧めたい。おそらく、我々が生きている間に、ブロッホ-バウアー・コレクションのクリムトを5点まとめて観られる最後の機会になる可能性が大きい。

しかし、モデルのアデーレ・ブロッホ-バウアーの遺志に拘らず、これら珠玉の5点が散逸してしまう遠因がナチスユダヤ人迫害にあるとすれば、我々が恨むべきは、相続人たちではなく、これらの絵を横領したアドルフ・ヒトラー、ヘルマン・ゲーリンク、ラインハルト・ハイドリヒたちだろう。