ラトルのモーツァルト

夜、NHK-BS2ベルリン・フィルの2005年ジルヴェスター・コンツェルトの実況録画の再放送をしていた。生誕250年にあたる2006年を目前にして、演目をすべてモーツァルトで固めている。昨年暮れに観たときは、あまり感銘を受けずに「プラハ交響曲の途中で消してしまった。しかし、改めて聴いてみると、印象が一変した。溌剌かつ馥郁とした演奏である。ベルリン・フィルの楽員たちが集中力を発揮して、繊細なアンサンブルを奏でているのが見て取れる。メインの「フィガロの結婚」の第4幕フィナーレも歌手たちの息がぴったりと合い、全曲を聴きたくなった。アンコールの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は、天上から舞台に光が差し、神が降臨するような演奏だった。これは、モーツァルトブルックナーの最上の演奏にのみ許される奇蹟である。サイモン・ラトルというのは、やはりたいへんな指揮者だ。

演奏を聴きながら、妻は「やっぱりラトルはいいわね。」と述懐した後、「あなたが将来を嘱望している指揮者を3人挙げるとしたら誰?」と難しいことを聞く。「サイモン・ラトル井上道義。」までは、簡単だったが、3人目が絞れない。何回か実演を聴いたことがある指揮者の中では、準・メルクルか*1。実演は1回しか聴いていないが、クリスティアン・アルミンクも才能がありそうだ。もう一人のクリスティアンであるティーレマンも逸材の予感があるが、いかんせん実演を聴いたことがないので、何とも言えない。いやはや、指揮者業界も人材難のようだ。

*1:1999年12月23日「第九」、2001年4月8日「ラインの黄金」、2002年3月29日「ジークフリート」、2003年4月6日「ヴァルキューレ」、2004年4月1日「神々の黄昏」