「違法の戦争、合法の戦争」読了

筒井若水著「違法の戦争、合法の戦争」を読了した。著者は、日本を代表する国際法学者のひとりだ。条約と国際慣習法法源とする国際法の枠組みを用いながら、戦争は違法なのか、戦争はなくならないのか、戦争における人道とは、日本国憲法日米安全保障条約国連憲章のもとにおける日本の国際協力とは、等々の難問に正面から取り組んでいく。快刀乱麻を切るようにいかないのは、著者が歴史や国際情勢の現実を踏まえて議論しているからだ。条約や国際組織とて、所詮は国際政治の妥協の産物に過ぎない。「国際平和」「戦争放棄」「非武装中立」などの標語に依らず、理想と現実をともに直視する強靭かつ柔軟な知性をもつ読者であれば、得るところの多い本である。
違法の戦争、合法の戦争 国際法ではどう考えるか? (朝日選書 (782))