復員船仕様「雪風」

夜、外出のついでに秋葉原ラジオ会館に立ち寄る。オタク文化の聖地である。そんなところに足を踏み入れたのがそもそもの間違いだった。とある開封屋のガラスケースの中に、復員船仕様の「雪風」を見つけてしまったのである。タカラの「世界の艦船 Series 4」のシークレットだったものだ。その存在は知っていたが、入手は絶望視していた。とたんに、艦船模型には当分手を出すまいという一昨日の決心は、もろくも瓦解した。しかし、値段を見てぎょっとする。4,000円である。この店が、商品の需給関係を反映した適正な値付けをしているとすれば、かなりの稀少品ということになる。つまり、次にいつお目にかかれるかわからないということだ。さすがに、その場で買う気にはなれず、館内の開封屋をあちこち覗くが、どこにもない。

閉店間際に最初の店に戻る。これは値切るしかないと、意を決して店員のお兄さんに声をかける。こうなったら、恥はかき捨てである。
「すみません、この雪風ですけど、何でこんなに高いんですか。」(と交渉のきっかけを作る。)
「こんときのシリーズは、ノーマルが全然人気なかったんで、シークレットが品薄なんすよ。」(道理で。私は、このシリーズの発売時には見向きもしなかった。)
「高いなあ。2,000円なら買うんだけど。」(値段交渉は、極端に振るのが肝要である。)
「そりゃ無理っすよ。」(無理は承知のうえだ。)
「だったらいくらにしてくれる?」(と間髪入れず畳み掛ける。)
「ラストワンだしなあ。2割引きならなんとか・・・。」(3,200円まで下りてきた。)
「じゃあ、3,000円にしてよ。買うからさ。」(最後の一押しが肝心である。)
「うーん、まあ、いいっすよ。」(やった、交渉成功!)

それにしても、3,000円である。連斬「大和」が丸々1隻買える値段だ。しかも、復員船仕様なので、戦時仕様に比べて部品点数は圧倒的に少ないのである。物好きとしか言いようがない。しかし、本当に艦船模型を控えねば。1週間は買わない、というのは目標として低すぎるか。1ケ月。でも、こういうのは機会を逃すわけにはいかないし・・・。「艦船模型は、やむを得ない特段の事由のある場合を除き、購入を控えるよう努めるものとする。」よし、これで行こう。