ドレスデン国立美術館展

会期末が迫ってきたので、国立西洋美術館ドレスデン国立美術館展を観に行く。ドレスデンは、1992年の5月に妻とヨーロッパ旅行をした際に訪ねた地だ。当時は、聖母教会はまだ瓦礫の山で、無差別大量虐殺爆撃(英語に翻訳すると「strategic bombing 」というのだそうだ)の痕跡を留めていたが、展示を見ると、立派に再建されたようだ。アングロサクソンが破壊してしまったものを寸分違わず元通りにしないと気がすまないのがドイツ人らしい。

前半の工芸品や宝飾品は、まあどうでもよく、目当ては、フェルメールの「窓辺で手紙を読む若い女」(1659)とフリードリヒの「雪の中の石塚」(1807)、「エルベ渓谷の眺め」(1807)、「月を眺める2人の男」(1819)だ。フェルメールは、去年観た「画家のアトリエ」(1666)に較べるとタッチが明確だが、やはり左の窓から差す柔らかい光に包まれている。フリードリヒの佳品3点に再会できたのはうれしかった。いずれも不思議な静謐さを湛えている。できれば、「ドレスデン近郊の狩場」(1832)も持ってきてもらいたかったところだ。フリードリヒ以外のロマン主義絵画では、ほの暗い雰囲気のダールの「満月のドレスデン」(1839)やエーメの「霧中の行列」(1828)*1に惹かれた。そのほかでは、レンブラントの「ガニュメデスの誘拐」(1635)が興味深い。

フェルメールとフリードリヒだけで十分満足して会場を出る。絵画が半分もない図録は買わず、代わりにミュージアムショップで見つけた「FRIEDRICH」(TASCHEN)の印刷がきれいだったので買い求めた(フリードリヒの微妙な色調は印刷で再現しにくい)。
Caspar David Friedrich (Taschen Basic Art)
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20040620

*1:フリードリヒの「樫の森の修道院」(1809)の葬列を彷彿とさせる。