「巡洋艦インディアナポリス撃沈」読了。

リチャード・ニューカム著「巡洋艦インディアナポリス撃沈」(ヴィレッジブックス)を読了した。あとがきで紹介されているハンター少年と同様、私も映画「ジョーズ」の再放送を観ていて、ロバート・ショウ扮するクイント船長が問わず語りのインディアナポリスの物語に興味を惹かれた。そこで、日米双方の視点から、この米国海軍史上最悪の事故を俯瞰しようと、橋本以行著「伊58潜帰投せり」(学研M文庫)と本書を読んだ。かたやインディアナポリスを撃沈した伊58潜艦長の回顧録、かたやジャーナリストが丹念な取材を踏まえて史実の再現を試みたドキュメンタリーと、いずれも読み応えがあった。インディアナポリスの約1,200名の乗組員のうち、約300名が艦と運命をともにし、約600名が4日間に及ぶ漂流中に死亡するという惨劇の原因は、護衛艦なしで単独航行していたことと、米国海軍の官僚組織の中で、沈没情報が適時に伝わらなかったため救難活動が遅れたことの2点に尽きる。日本国民としては、広島長崎に投下された原爆ウラン235をサンフランシスコからテニアンに送り届ける途上のインディアナポリスを撃沈してほしかったところだが、仕方がない。サメに食われた乗組員に原爆投下の罪はないだろう。
伊58潜帰投せり (学研M文庫) 巡洋艦インディアナポリス撃沈 (ヴィレッジブックス)