エレクトラ

エレクトラ」は、妻と初めていっしょに観たオペラである。1992年5月にヨーロッパを旅行した際、バスティーユ・オペラで観た。ギネス・ジョーンズのエレクトラ、ザビネ・ハースのクリソテミス、レオニー・リザネクのクリテムネストラという超弩級の布陣で、妻にとっては強烈なオペラ初体験となった。オペラを観たことのない初心者にいきなり「エレクトラ」を観せるのもいかがなものかと思うが、我々の短いパリ滞在中にバスティーユにかかっていたのは、これだけだったので仕方がない。*1

さて、そのような原体験を持つ我々なので、少々の演奏では驚かない。ウルフ・シルマー指揮の東京フィルはよく鳴っていたが、もっと凶暴に不協和音を撒き散らしてもいいはずだ。エレクトラのナディーヌ・セクンデは、この難役を健闘したと言っていいだろう。クリテムネストラのカラン・アームストラングは、知名度のわりには今ひとつだったかもしれない。役柄もあるが、セクンデに押され気味だった。オレストのチェスター・パットンは、朗々とした声でなかなかよい。

しかし、初台は、今の芸術監督の方針で、外国人歌手を中心としたシングル・キャストになってしまい、日本人歌手を中心とした組を聴く楽しみがなくなってしまった。まあ、さすがにエレクトラを歌える日本人歌手はいないかもしれないが、クリソテミスならいくらでもいるだろうに。

帰宅後、車で娘たちを迎えに行く。親友と3人で遊んでいる真っ最中で、連れ戻すのに苦労した。O家には申し訳ないことをした。

*1:その旅では、ヴィーンで「椿姫」、ドレスデンで「ばらの騎士」「魔弾の射手」、ベルリンで「タンホイザー」を観せた結果、妻はすっかりオペラにはまった。私の計算通りである。