「鉄塔武蔵野線」読了

これが果たして小説かどうか、議論が分かれるところだろう。敢えて言えばblogに近い。最下流の81号を起点に、武蔵野線の鉄塔を老番から若番へ文字通り1基ずつ遡っていくという物語なので、鉄塔に興味がない人が読んだら、面白くも何ともあるまい。少年の心理を大人の語彙で説明したり、夏の田園風景が丁寧に描写されていたりはするが、それらは装飾に過ぎず、本質は主人公(=著者)の鉄塔への偏愛の吐露だ。それでも、物語は次第に緊迫していき、第8章はかなり感情移入できた。それだけに最終章には興ざめた。多分に消化不良感が残るものの、第8章で終わってもよかったと思う。単行本の最終章は文庫本と違うそうなので、図書館で探してみよう。
鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20040429