エジプトのヘレナ

シュトラウスの「エジプトのヘレナ」は、文字通り初めて聴く曲だ。調律の後、指揮者の若杉弘登場。ずいぶん歳をとった。1979年に都響を指揮したマーラーの第3交響曲を聴いて以来、四半世紀近くにわたって聴きつづけている指揮者だ。強奏で始まるが、以降、正直楽しめたとは言いかねる。音楽的には、「エレクトラ」を協和音で書き直したような曲で、1927年という作曲年代を考えると、退行とも言えるほど保守的だ。筋書きも、平たく言えば、魔法や薬の力を借りて夫婦が撚りを戻すという話なので、およそ感動がない。第2幕では、意識がぷつんぷつんと瞬断したことを告白せねばなるまい。窮余の策で(文字通り)子供を担ぎ出してやっと和解が成立、という幕切れもいただけない。終演後、妻が一言、「結局、子は鎹なのね。」

歌唱陣では、葛藤に右往左往するメネラスを福井敬が好演。ローエングリンといい、アルヴァといい、こういう役柄は彼の真骨頂だ。1つ発見だったのは、メネラスはアガメムノンの弟ということで、シュトラウスは、この兄弟の物語を「エレクトラ」と「エジプトのヘレナ」で描いたわけだ。そういう意味でも、この2作品は、シュトラウスの系譜の中で表裏一体をなしているのかもしれない。

終演後、帰りは常磐線新京成線経由で北習志野へ戻る。
夕食後、帰途につく。京葉道路→7号線→都心環状線→3号線と順調にたどったが、途中風雨が強く、用賀のあたりは土砂降りだった。

今日は異様に暖かかった。天気予報によれば、今日の東京の最高気温は21.6℃、5月上旬の気候とか。2ケ月も早い。二十四節気の季節感も追い越してしまった感じだ。