狭山丘陵の探検。

Wilm2004-02-07

晴れ。

今日は妻のスクーリングの日である。我が家には珍しく、10時前に車で出発する。是政橋を渡って府中街道をひたすら北進。11時半頃、狭山丘陵の一角にあるキャンパスに到着した。なかなか立派である。サークルの雑然としたブースや無秩序な貼紙の掲示板を見ているうちに、20数年以上前の大学生活が懐かしく蘇ってきた。学生食堂で昼食をとる。親子4人で2,045円と激安である。学食で食事をするのも久方ぶりだ。

食後、クラスの始まる妻と別れ、3人で狭山丘陵の探検に出かける。映画「となりのトトロ」では、病院に入院しているおかあさんを父娘3人で見舞いに行くのだが、どうもシチュエーションがだいぶ違う。まず、東村山の正福寺に行く。1407年(約600年前!)に建立された禅宗様式の地蔵堂がある。東京都内で唯一の国宝建築物だ。ここには、志望大学の入試に落ちて浪人が決まった春にひとりで来た記憶がある。その頃は、娘たちを連れて再訪しようとは思ってもみなかった。地蔵堂は、端が反り返った柿葺の屋根が独特の雰囲気だ。波欄間の意匠も面白い。

寺の駐車場に車を置いて、八国山緑地に向かう。途中、かやぶき民家園の門があったが、肝心の民家は、1999年に放火で焼失したとのこと。黒こげの柱が何本か横になっていた。西武鉄道西武園線の踏切を渡ると八国山緑地。「となりのトトロ」に出てくる七国山のモデルと言われているところだ。雑木林の中を登っていくと、あちこちにモグラ塚がある。子供たちがそっと土をどけると、直径数センチの穴が現れる。EX-S20をマクロ・強制発光モードにして撮影すると、先の方まで穴が続いているのがわかる。梢では、コゲラエナガがせわしなく飛び回っている。犬を連れた人が多く、格好の散歩コースのようだ。

尾根道を辿っていくと、電源開発の只見幹線500号鉄塔の下に出る。猫バスがこの上を走ったことで有名である。帰ってから調べると、只見幹線は、その名の通り、只見水系の水力発電所からはるばる送電してきているらしい。しかも、電源開発が首都圏に送電しているのは、御母衣系・九頭竜系からの佐久間東幹線とこの只見幹線だけのようなので、珍しい送電線ということになる。さらに尾根道を進むと、JR東日本の前-境102号鉄塔が出てくる。こちらは、JR東日本が自営発送電のために、新潟県小千谷市信濃川発電所から延々と送電してきている信濃川線の鉄塔ということだ。東京電力以外の高圧送電線が2系統もこの丘陵を横断しているというのは興味深い。どうりで映画にも出てくるわけだ。

将軍塚で折り返し、病院の方へくだる。いくつかの病院が集まっているので、どれに草壁靖子が入院していたのかはわからない。正福寺に戻り、こんどは多摩湖(村山貯水池)へ。ダムの上の村山上貯水池は湖岸に近寄れない。村山下貯水池はダムの下におりられたが、渇水期のためか、水面は遥か彼方だった。湖岸にはフェンスが張られており、飲料用水源地だけあって、セキュリティが厳重だ。確か、小学校1、2年生の頃、遠足でここに来たはずだが、どこで弁当を食べたのだろう。その頃は、無論、遠い将来、自分と同い年くらいの子供を連れてくるとは思いもしなかった。

最後に狭山湖(山口貯水池)へ行く。巨大な堤体を斜めに登っていく。上には、広々とした湖面が待っていた。大岳山を中心に奥多摩の山々が連なっている。水面には無数のマガモが群れている。振り返ると、遠くに八国山緑地が見える。堰堤の中央付近で日没を待つ。富士山がくっきりシルエットになり、やがて、雲を金色に輝かせながら、山の端に日が沈んでいった。その後、大学に戻り、妻をピックアップ。多摩湖の堰堤を走っていると、村山下貯水池の向こうに月齢16.6の赤い月がぽっかり浮かんでいた。長女が「何か不気味だね。」と言う。いいところに気がついたね。赤い満月は人を狂わせるのだよ。大人になったら、「ヴォツェック」を観てごらん。

夜、Webでの送電線や鉄塔の検索結果を妻に話した。「鉄塔、ガスタンク、給水塔などの産業構造物が趣味の対象になるのは理解できるね。」と言ったら、「全然理解できない。」と言下に否定された。実は、暇さえあれば、「鉄塔武蔵野線」の少年たちのように、送電線をどこまでも辿っていきたいという願望があるのだが、妻には理解してもらえそうもないらしい。
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