小学生に第九は百年早い

家族4人で第九の演奏会に出かける。ところは池袋の東京芸術劇場、オケは読売日響。小学4年生と1年生の娘どもを初めて本格的なオーケストラの演奏会に連れて行くという無謀な試みである。しかし、S席@8,000円を奮発しているので、失敗は許されない。

芸劇裏のマクドナルドで昼食。クラシックの演奏会前の食事としてはいささか侘しいが、子連れだから仕方ないのである。チーズバーガを齧りながら、「これから聴く読売日響は、パパが高校2年生のとき、生まれて初めて行った演奏会のオーケストラで、そのときの指揮者も、今日のグシュルバウアーであったのだぞ。」と娘どもに説明するが、反応は、「ふぅーん。」と鼻に抜けた。これからの展開を暗示するようで、不安だ。

開演5分前に着席。「演奏中、絶対に物音をたててはならない。トイレに行けるとも思うな。ここは映画館ではないのだ。」と娘どもに訓示する。調律の後の静寂の中、指揮者のグシュルバウアー登場。往年の中堅指揮者も、今や巨匠の風格だ。演奏開始。厳粛な提示部に、長女は身を乗り出して聴いている。「おお、わが娘もやるではないか。」と感心したのも束の間、小学生の感動曲線は5分で急降下した。以降は、そわそわもぞもぞ動いて、落ち着かないことこのうえない。特に、第2楽章では楽曲のリズムとずれるので、およそ音楽に集中できなかった。第3楽章でようやく静かになったと思ったら、寝ていた。終楽章冒頭の騒音で目が覚めたようだが、あとは合唱の大音量のどさくさで、子供の動きは気にならなかった。我々の後席の客もさぞかし迷惑したことだろう。申し訳ない。爆睡していたことを祈るばかりだ。当分、娘どもはクラシックの演奏会に連れていくまい。百年早かった。

だいぶ気が散ったとはいえ、演奏そのものはよかった。毅然とした表情の第九で、感動した。評価は、S・A・B・Cの4段階評価でA。これで今年の演奏会も終わりである。結局、オーケストラは今日だけで、あとはオペラが4回(カルメンジークフリートばらの騎士、ルル)だった。近年、この傾向が定着した。来年もオペラ漬けになることだろう。