「世界の航空機コレクション」その6

買い物を終えて外に出ると、雷雨になっている。丸井に引き返し、傘を買う。しかし、最寄駅に帰り着く頃には、西の空が明るくなり、雨は上がっていた。運がいいのか悪いのか、わからない。

家への道すがら、ジェット機の爆音が聞こえたので、空を見上げると、このあたりでは珍しく、大型旅客機が低空で旋回している。双眼鏡を取り出して*1見ると、L-1011だ。垂直尾翼に派手なマーキングがあり、機体前部には山形のロゴがある。北へ飛び去っていったので、横田基地へ向かう民間チャーター機のようだ。

帰宅後、ネットで調べると、アメリカの格安航空会社のATA航空であることがわかった。ATAL-1011-500は、すでに定期航空路線からは退役しているが、まだ4機がチャーター便に運用されているようだ。稼動中の4機のうち、N162AT・N163AT・N164ATの3機は、ATAロゴのない2007年塗装にすでに転換されているので、私が見た機材はN161ATであることが特定できた。

N161ATの履歴を調べると、1981年10月20日にロイヤル・ヨルダン航空に引渡され、登録番号JY-AGBが付与されている。JY-AGB・・・、どこかで見た番号だ。あわてて、「世界の航空機コレクション」のL-1011-500を見ると、JY-AGBだ。何と、このフィギュアの実機を見たのである。奇遇だ。履歴によると、ATA航空は、この機材を1999年9月1日にロイヤル・ヨルダン航空から受領している。

というわけで、L-1011-500「トライスター」である。今や、旅客機としては第一線を退いた3発ジェット機だ。

フィギュアは、ヨルダン・ハシェミット王国のフラッグ・キャリア、ロイヤル・ヨルダン航空のJY-AGB「プリンセス・アリア」*2である。ロイヤル・ヨルダン航空は、現在、日本への定期便・チャーター便の乗り入れがないので、馴染みのない航空会社だ。JY-AGBは、ロイヤル・ヨルダン航空が導入した10機のL-1011-500のうちの2号機で、上述の通り、1981年10月20日に受領、1999年1月にATA航空に売却されている。

毎度のことながら、これもよくできている。特に、機体後部のエアインテイクから第2エンジンにかけての機体ラインは、いかにも中にS字ダクトが通っている、という感じの複雑な曲線を見事に再現している。マーキングも正確である。強いて言えば、目が切れ長すぎる。旅客機は、顔の再現が難しい機材が多いが、L-1011もその一つだ。

しかし、L-1011は、本物をろくに見たこともなく、ましてや日本に飛んでこない中東の航空会社の塗装なので、縁も所縁もないフィギュアと思っていたが、実機が飛んでいる姿を望見するとは思わなかった。今回買った10機のフィギュアのうち、飛んでいる姿を実際に見ることができそうなのは、このJY-AGB、MU-2B(JA8737)、B737-86J(D-ABAN)、B-307B(NX1940)くらいだろう。YS-11(JA8611)、Fw200(D-ACON)、Do X(D-1929)が飛ぶことは決してないし、L1049G(EC-AMP)とIl-76MD(CU-T1258)の消息は、ネット上では不明だ。JN-4は、復元機がどこかの空を飛んでいるかもしれない。

*1:こういうときのために、外出時には必ず愛機のダッハプリズム双眼鏡を携帯している。

*2:フセイン前ヨルダン国王の第1王女。1956年生まれ。