「十七歳の硫黄島」読了

秋草鶴次「十七歳の硫黄島」(文春文庫)を読了した。21,000名余の硫黄島守備隊のうち、わずか1,023名が捕虜となったが、筆者はその数少ない生存者の一人である。筆者は、栗林司令部の突撃により日本軍の組織的抵抗が終焉した1945年3月26日から約2ケ月後の5月17日頃、壕内で意識不明のところを米軍に救出された。通信兵だった筆者は、敵に向かって1発の銃弾も発射していないが、「玉砕やバンザイ突撃をせず、長期持久戦で敵に最大限の負担を強いよ。」という栗林兵団長の命令を最後まで忠実に守った将兵の一人ということになるだろう。しかし、彼が払った代償の大きさは、本書後半の凄惨な生存記から明らかだ。さまざま逸話によって、栗林兵団長は兵士に優しい上官であったというイメージがあるが、合理主義者である彼の命令の実行は、想像を絶する負担を自軍将兵に強いることとなった。生き残った筆者が戦死した戦友たちに抱く悔悟の念は、察して余りあるものがある。
十七歳の硫黄島 (文春新書)