「戦艦大和復元プロジェクト」読了

戸高一成戦艦大和復元プロジェクト」(角川書店)を読了した。呉の大和ミュージアムに展示されている「大和」の1/10模型の製作過程を紹介した本である。遺された僅かな図面・写真、海底に沈む「大和」のビデオなどの限られた資料から、「大和」を細部にわたって復元していく過程は、さながら暗号解読のような知的作業である。1月に見た1/10「大和」は圧倒的な迫力だったが、その完成までには、このような苦労があったことを知り、興味深く思った。呉に行く前に読むべきだった。これから大和ミュージアムに行かれる方には、一読をお勧めする。

帝国海軍は、当時世界最大・最高の戦艦を2隻も保有しながら、日露戦争以来の艦隊決戦主義に拘泥するあまり、それらを有効に運用できず、最後は2隻とも自滅的な作戦で失ってしまった。日本海海戦の成功体験が強烈であったがゆえに、大艦巨砲・艦隊決戦主義が帝国海軍の金科玉条となり、環境変化に適応できなかったのは、現代の企業組織にとって貴重な教訓だ。このあたりの分析は、名著「失敗の本質」に詳しい。
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20060106
戦艦大和復元プロジェクト 失敗の本質―日本軍の組織論的研究